今は自分の演奏においてクラリネットの占める割合は非常に大きい。 特にソロの場合はクラリネットの持つ基本的な特性とは別の「特性」を引き出す演奏 を続けていきたいと考えている。 現在はその為の一つの方法としてPowerBookを使用している訳だが、 では、そもそもこのクラリネットが持つ基本的な特性とは何かをあらためて考えてみたい。 まず、シングルリードの木管楽器であるクラリネットは見て分かる通り円筒形であり バスやアルトなど大小どのようなサイズの物であってもそれは同じである。 円筒形の場合オーバーブローした際に円錐形のサックス等とは違い12度、 つまりオクターブ+5度 (※1) が出音される。 そして更にクラリネットは現在の管楽器の中では唯一の閉管式 (※2) の楽器「閉管パイプ」である為、 オルガン等と同様、基音も同じ長さの円錐形楽器よりもおよそ1オクターヴ低くなる。 これらの事から他のリード楽器(サックス等) やフルートに比べ、圧倒的に広い音域をカバーできる訳です。 あと一つ、クラリネットは奇数倍音が出ないという他の楽器には見られない独特の倍音組織を持っています。 ここで云う偶数 / 奇数とは波長の「山(腹)」と「谷(節)」の事で数値的ににまとめてみると
▼開管楽器の場合 (サックスなど、殆ど)
開管式の楽器は、管の両端の空気震動が大きく、波長は管の長さの「2倍」であることから、
・基音は波長の1/2 (0.5 ×λ1=k)
・第2倍音は波長の2/2 (1.0 ×λ2=k、∴2×λ2=λ1)
・第3倍音は波長の3/2 (1.5 ×λ3=k、∴3×λ3=λ1)
・第4倍音は波長の4/4 (2.0 ×λ4=k、∴4×λ4=λ1)
・第5倍音は波長の5/2 (2.5 ×λ5=k、∴5×λ5=λ1)
▼閉管楽器の場合 (クラリネット)
閉管式の楽器は、管の片方の空気震動が最も大きく、波長は管の長さの「4倍」であることから、
・基音は波長の1/4 (0.25 ×λ1=k)
・第3倍音は波長の3/4 (0.75 ×λ2=k、∴3×λ3=λ1)
・第5倍音は波長の5/4 (1.25 ×λ3=k、∴5×λ5=λ1)
・第7倍音は波長の7/4 (1.75 ×λ4=k、∴7×λ7=λ1)
・第9倍音は波長の9/4 (2.25 ×λ5=k、∴9×λ9=λ1)
λ:波長 / 波が1回振動する際に進む距離(単位は m:メートル)
ν:振動数(周波数) / 1秒間に波が振動する回数(単位は 1/s もしくは Hz:ヘルツ)
v:音速 / 音の速度(単位は m/s)。1秒間に音波が進む距離と考えてもよい。
k:管の長さ
となります。
※1) クヴィンティーレン:オーヴァーブローが12度、つまりはオクターブ + 5度上になること
オクターヴィーレン:オーヴァーブローがオクターヴ上になること
※2) 管の一方が塞がれている管楽器のことですが、ここでいう閉管式とは、
正しくは「閉管式の音震動を利用した管楽器」ということです。
閉管式の楽器は、管の片方の空気震動が最も大きく、波長は管の長さの4倍です。
クラリネット以外のほ管楽器はとんど開管式で、
これらは管の両端の空気震動が大きく、波長は管の長さの2倍です。